手間がかからず、収穫量の多いサツマイモは、家庭菜園にうってつけの野菜。育てやすい点は、連作障害が起きにくい、土質を選ばない、少ない肥料で育つ、暑さや乾燥に強く生育旺盛、病害虫の被害が少ない、などと豊富です。
ただし、寒さや過湿には注意が必要。このウィークポイントをきちんと押さえて対策すれば、園芸初心者でも栽培は簡単です。今回はサツマイモの挿し穂(タネイモからつるを切った苗)から育成する方法を紹介します。

- 温暖地沖縄・九州・四国
- 中間地中国・近畿・中部・関東
- 寒冷地北陸・東北・北海道
※上記の地域区分は目安としてお考え下さい。
標高や地形、年次変動によって同一地域でも気候条件が変動します。
お住まいの地域に合わせて栽培して下さい。
サツマイモを作るのに必要な資材
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苦土石灰 -
完熟牛ふん堆肥 -
化成肥料
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草木灰 -
黒マルチ
(農業用フィルム) -
植え穴用の棒
(支柱など)
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サツマイモを育てるコツ
サツマイモは吸肥力が強く、少ない肥料でよく育ちますが、「つるボケ」になりやすいという欠点もあります。「つるボケ」とはつるや葉ばかりに栄養が渡って、肝心の実付きが悪くなる状態のこと。この症状は、主に窒素成分が過剰になると発症しやすくなります。サツマイモは普通の野菜に比べて、3分の1~4分の1程度の窒素成分が適量。ただし、肥料を減らしたことでカリウム分が不足するようなら、草木灰を元肥に混ぜましょう。
また、園芸店やホームセンターで挿し穂を選ぶときは、葉がしっかりしていて茎が太い物がおすすめです。
サツマイモの植え付け
植え付けの一週間前に、幅約60cmの畝用のスペースに、50g/㎡の苦土石灰を土に混ぜます。(ph5.5~6.0の酸性土壌を好むため、土壌の酸性度が数値内であれば散布しなくても構いません)植え付け当日、3ℓ/㎡の堆肥、20~30g/㎡の化成肥料、100g/㎡の草木灰をまいてよく耕しましょう。高さ30cmの畝を立て、黒マルチを張ります。マルチを張った場合は、挿し穂の植え方は「斜め植え」になるので、他の植え方(水平植え、船底植え)をしないように。
マルチの上から、棒を差して植え穴を作ります。穴は斜め45度の角度、約30cmの深さが目安で、株間は30~40cm間隔で空けましょう。植え穴に挿し穂を植え付けて、下から3~4節目までを土に埋めます。葉はすべて外に出し、挿し穂の先端にある成長点(植物が勢いよく成長をする部分のことで、主に茎の先端部分周辺)を埋めないように注意が必要。植え付け後は、植え穴に水が入るように、ジョウロでたっぷりと水を与えます。
サツマイモの管理
- 追 肥
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追肥は基本的には必要ありません。ただし、植え付けから約1ヵ月後、葉の色が薄くなったり、黄色っぽくなったりした場合は肥料不足です。つるの先に1株あたり3~5gの化成肥料をまきましょう。
- 土寄せ
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マルチを張っていない場合は、植え付けからつるが畝を覆うまでの2ヵ月の間に、土寄せを1~2回します。クワなどで株元へ土寄せをして、ついでに除草と中耕(浅く耕すこと)も行なっておきましょう。
- 水やり
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苗を植えたら、いかに早く根を活着(接ぎ木などの移植をした植物が根付いて育つこと)させるかが肝心です。土が乾燥したときに水を与えて、活着の手助けをしましょう。ただし乾燥に大変強い野菜のため、活着後の水やりは必要ありません。
- 除 草
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マルチの穴から雑草が生えてきたら、こまめに抜き取ります。夏以降、つるが茂って四方へ広がってきたら、つるを持って根を引きはがし、折りたたんで畝の上にまとめる「つる返し」を行ないましょう。
- 追 熟
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収穫してから追熟させると、デンプンが糖に変化し、甘みが増します。風通しが良く、雨の当たらない日陰に2週間ほど置いておきましょう。
サツマイモの収穫
葉が黄色くなってきたら、収穫の合図。作業は土が乾いた晴天の日を選びましょう。
地上部のつるを10cm程度残して切り、マルチをはがします。イモを傷付けないよう、株から少し離れた周囲をスコップで掘り起こし、株元を持ってイモを引き抜きましょう。
なお、霜にあたるとイモが腐ってしまうことがあるので、初霜の前には収穫を終えます。

サツマイモの病害虫
- 黒斑病
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イモの表面に黒い円形の病斑が発生します。病気の株からは苗を取らない、また発生した菜園には苗を植えないようにしましょう。植え付け前、苗の切り口を殺菌剤に20~30分間浸すことで予防できます。
- エビガラスズメ
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エビガラスズメは蛾の仲間です。その幼虫はお尻の部分に大きな角があるのが特徴。幼虫が成長すると、食害が拡大するために注意が必要です。
栄養価
甘みとほくほくとした食感が楽しめるサツマイモ。イモ類の中でも飛び抜けた甘さが人気で、焼イモやふかしイモ、スイートポテトなどのお菓子の食材として欠かせません。
栄養面で注目したいのは、豊富な食物繊維とビタミンC。食物繊維は腸内の善玉菌を増やし、お通じを良くする効果があります。一方のビタミンCは、免疫力の向上やシミ、そばかすの予防に効果的です。
サツマイモの栄養価は、収穫直後だとより高くなっています。自家栽培をして、甘さと栄養価が詰まった採れたてのサツマイモを味わってみましょう。