スイカは夏の風物詩として知られる野菜。子供の頃の夏休みには、誰もが海水浴場や田舎の縁側で、あのシャリシャリとした食感を楽しんだものです。大人になって、思い出たっぷりのスイカを家庭菜園で作ってみると、味わい深いものがあります。つるを手入れしたり、日光に当たるように実の向きを変えたりと、栽培は手間がかかりますが、愛情をこめて育てましょう。収穫期が近づいてきて、あのユニークな縦縞模様の入った実が大きくなってくると、これまでの苦労が吹き飛んでしまうほど、胸が弾むはず。そこで、今回は苗から育てる方法を紹介します。夏になって収穫を迎えたスイカは、懐かしい思い出と変わらないおいしさです。

- 温暖地沖縄・九州・四国
- 中間地中国・近畿・中部・関東
- 寒冷地北陸・東北・北海道
※上記の地域区分は目安としてお考え下さい。
標高や地形、年次変動によって同一地域でも気候条件が変動します。
お住まいの地域に合わせて栽培して下さい。
スイカを作るのに必要な資材
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苦土石灰 -
完熟牛ふん堆肥 -
化成肥料
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熔リン -
ワラ -
防虫ネット
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スイカを育てるコツ
スイカを健康に育てるには、高い気温(25~30℃)と乾燥させないことが大事。
そのため、植え付けは日当たりが良く、水はけのいい場所にしましょう。
また、実が大きくなると、つるに負担がかかってきます。この状態が続くとつるが折れやすくなるので、果実をネットや網袋などに入れて支柱で吊り下げると安全です。
スイカの植え付け
植え付けの2週間前に100~150g/㎡の苦土石灰をまいてよく耕します。植え付けの1週間前に、2m四方のスペースの中心に、幅30cm、深さ30cmの穴を掘って、その中に元肥として堆肥2kg/㎡、化成肥料30g/㎡、熔リン15gを入れましょう。土を埋め戻したあと、直径40cm、高さ20cmの円錐形に土を盛って「鞍付き」を作製。植え付け当日は、鞍付きの頂上に、植え穴を堀って、水を注ぎます。
水が引いたら苗をポットから地面に植え替え。株のまわりにドーナツ状にくぼみを作り、水を注ぎます。なお、つるが伸び始めたらつるや葉の下にワラを敷くのがおすすめ。
株を安定させ、泥はねや雑草を防ぐ効果があるので、株の成長に合わせて敷くスペースを広げましょう。
スイカの管理
- 摘心・整枝
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植え付けの1~2週間後、本葉が5~6枚の大きさに成長したら親づるの先をハサミで切り取り(摘心)、雌花が多く付く子づるを伸ばします。子づるが伸びてきたら、茎が太く勢いの良い物を3~4残し(整枝)、他は付け根からハサミで切り取りましょう。
- 人工授粉
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雌花が咲いたら、雄花を摘んで花びらを取り去り、雄しべの花粉を雌花の雌しべに軽くこすりつけて受粉させます。受粉能力の高い、晴天の日の午前9時までに行ないましょう。受粉日を書いたラベルを実の近くに下げておけば、収穫の目安になります。
- 玉直し
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受粉から2週間前後経った頃、玉直しを行ないます。果実の向きを変えて、玉全体にまんべんなく日光が当たるようにしましょう。これは見栄えの良い実を収穫するための作業です。
- 摘 果
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スイカの果実は1本のつるに1個、1株に2個までが目安です。やや長めの形の良い物は残して、形の悪い物は摘み取りましょう。
- 追 肥
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摘果後、果実がピンポン玉くらいの大きさになったら、30g/㎡の化成肥料をワラの上からまんべんなくまいて追肥。その後も2週間に1回、同量をまきます。
スイカの収穫
受粉日(開花日)から40~45日後、へたをハサミで切って収穫します。
収穫の目安は、受粉日から計算する以外に、着果節から伸びる巻きひげの枯れ具合で判断が可能。
収穫が早いと甘みがのらず、遅いと果肉が割れたり溶けたりするので、見極めが大切です。
スイカの病害虫
- ウリハムシ
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ウリハムシの幼虫は黄白色のウジ虫で、土中で根を食害するため葉が蝕まれていることがなかなか分かりません。成虫になると葉や果実に寄生して食害するようになります。防虫ネットをかけるなどして対策しましょう。
- アブラムシ
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新芽や葉に集団で寄生して吸引する害虫で、ウイルス病を媒介する場合もあります。水をかけて洗い流すか、発生初期に殺虫殺菌剤や殺虫剤を散布して駆除しましょう。発生前に不織布などで株を覆うことでも対策可能です。
- ハダニ
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葉裏に寄生して汁を吸う害虫。吸われた部分は葉緑素が抜け、表から見ると白く小さな斑点ができているように見えます。被害が進行すると葉色が悪くなり、落葉して枯れる場合も。水に弱いため、定期的に葉裏に散水して対策しましょう。
- うどんこ病
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うどん粉をまいたような白色のカビが葉や茎に円形に生え、次第に全体に広がります。光合成が阻害される他、葉の養分が吸収され生育不良になり、花が咲かない、果実が肥大しないなどの害があるため、発生初期に薬剤を散布して対策しましょう。また、窒素過多がうどんこ病の原因になるので、肥料を与えるときは注意が必要です。
栄養価
スイカは夏の王様と称される野菜。その栄養価は夏に健康を保つのに最適な物ばかりです。スイカの果肉や種に多く含まれているカリウムは、疲労回復の効果があります。夏の暑さで衰えた体も、カリウムを摂取すればたちまち元気に。
またスイカに含まれているβ-カロテンは、夏の日差しに強い特性があります。具体的には、日光を浴びると体に発生する活性酸素(顔のシミなどの原因)を除去してくれるのです。
なお、栄養価ではないのですがスイカの約90%を占める水分は、体を冷やしてくれるので熱中症の対策となっています。夏を元気に乗り切りたいなら、スイカを定期的に食べるようにしましょう。