保存性抜群の常備野菜として、キッチンに欠かせないタマネギ。栽培期間は半年以上と長いものの、病害虫の被害が少ないうえに手間もかからず、いくつかのポイントを守れば充実した収穫が得られます。数多くの品種があり、初心者の方なら栽培期間が短く、失敗の少ない極早生・早生品種がおすすめ。おいしさにこだわるなら、じっくりと育てる味の良い中晩生品種がいいでしょう。
また、タマネギの貯蔵性を決めるのは色と形です。身が詰まって辛味の強い黄球種は赤玉種より貯蔵性が高く、形では甲高な品種ほど水分が少なく長もちします。

- 温暖地沖縄・九州・四国
- 中間地中国・近畿・中部・関東
- 寒冷地北陸・東北・北海道
※上記の地域区分は目安としてお考え下さい。
標高や地形、年次変動によって同一地域でも気候条件が変動します。
お住まいの地域に合わせて栽培して下さい。
タマネギを作るのに必要な資材
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有機石灰 -
完熟牛ふん堆肥 -
鶏ふん
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米ぬか -
熔リン -
黒マルチ
(農業用フィルム)
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タマネギを育てるコツ
栽培適期を守ることが最大のポイントです。
植え付けが早すぎると、寒くなる前に大きくなりすぎてとうが立ち、ネギ坊主がついて堅く食感の悪い球になります。逆に遅すぎると株が小さいうちに寒さが厳しくなり、霜で枯れてしまうことも。
球をしっかり太らせるため、元肥にはリン酸肥料を忘れずに入れましょう。
タマネギの植え付け
最も一般的なのは、10〜11月に出回る苗から栽培する方法です。植え付けの1週間前に、栽培スペースに有機石灰300〜400g/㎡をまいてよく耕しましょう。植え付け当日は、元肥となる堆肥6kg/㎡、鶏ふん300g/㎡、米ぬか100g/㎡、熔リン100g/㎡をまいて耕し、畝を立てます。畝の上に雑草よけの黒マルチを張り、端を土に埋めてはがれないように押さえましょう。黒マルチは、15cm間隔で穴のあいた物を利用すると便利。
苗は根もとの直径が7〜8mm、根が白くて傷みがない物を選ぶといいでしょう。
深さ2〜3cmの植え穴をあけ、根の先が地上にはみ出さないよう、すべての根を丸めて穴の中にしっかりと入れ込みます。植え付ける深さは、苗の白い部分(葉鞘部)が半分くらい埋まる程度。青い葉が分かれる分岐部に成長点があり、この部分が土に埋まらないように注意しましょう。
たくさん栽培したいときにはタネを購入して苗を育て、菜園に定植して育てましょう。7〜8月に出回るタネ球を植え付ければ、80〜90日で収穫できます。
タマネギの管理
- 除草・枯れ葉取り
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マルチの穴や畝の雑草はこまめに取り除きます。枯れた下葉をそのままにしておくと湿気がたまって腐敗し、病害虫発生の原因になるため、適宜摘み取りましょう。
- 追 肥
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成長が止まる冬期は追肥不要で、越冬後に計2回の追肥を行ないます。1回目は気温が上がって株が成長し始める2月下旬〜3月上旬、2回目は株が肥大し始める3月下旬〜4月上旬に、マルチ1穴あたり6gのぼかし肥をまきましょう。
タマネギの収穫
暖かくなると、肥大した球が地表にせり上がってきます。全体の7〜8割の葉が倒れたら収穫適期のサイン。
収穫は、土が乾いた晴れの日に行ない、株もとを持ち引き抜きます。
収穫した球は、畝の上や風通しのよい場所に並べ、晴天であれば半日程度乾かしましょう。
葉付きのまま吊るして保存すれば、さらに貯蔵性が高まります。

タマネギの病害虫
- アブラムシ
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春になって暖かくなると発生し、新芽や葉に群生して茎や葉の汁を吸います。生育が悪くなるだけでなく、各種ウイルス病を媒介する場合もあるので、早めの対処が必要。粘着テープを押しあてて取り除くか、発生初期に殺虫殺菌剤や殺虫剤を散布して駆除します。
- タネバエ
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ハエの仲間で、幼虫が種子や幼芽の地際部、鱗茎などを食害します。秋に発生することが多く、成熟した幼虫は体長5〜10mmまで成長。未熟な堆肥や鶏ふん、油かす、ぼかし肥など未分解の有機質肥料を使わないようにすることで、発生を防ぐことができます。
- 鱗片腐敗病
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細菌による病気で、外皮近くの鱗片が上部から腐敗します。水はけの良い畑で栽培し、土壌に余分な肥料分を残さないよう、肥料のやりすぎに注意しましょう。未熟な堆肥を使わないようにすることも大切です。
- 白色疫病
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主に葉に発生する土壌伝染性のカビによる病気。初めは葉の中央付近に暗緑色の病斑を生じ、拡大して白色の病斑になると、その部分で折れたり葉の先から枯れたりします。カビの胞子が水中を泳ぐため、水はけをよくすることで防除できます。
栄養価
タマネギを包丁で切ると涙が出るのは、硫化アリルの一種「アリシン」が揮発して目に刺激を与えるから。厄介な成分と思われがちですが、「アリシン」には様々な有効作用があります。血液をサラサラにして血栓を予防する効果や、血液中の善玉コレステロールを増やして抗酸化力を高める効果があると言われています。
また、ビタミンB1の吸収を助ける働きもあり、疲労回復や免疫力・体力増進にも効果的。さらに、高血圧を予防するカリウムも多く含まれ、生活習慣病の予防も期待できます。