江戸野 陽子先生のブログ
2020/05/19
こんにちは。
野菜と豆腐の料理家、江戸野陽子です

今回は生おからの焼き菓子レシピで欠かせない、「ベーキングパウダーと重曹の話」をしたいと思います。

今までいくつもの生おから焼き菓子レシピを作ってきましたが、「いかにして生おから入りの生地を膨らませるか」というのが最重要ポイントだと思っています。
ご存じのように、生おからは大豆から豆乳を絞ったときにできる絞りかすです。
よく見てみると分かると思いますが、おからは粒が大きく、水分が含まれているので、膨らみにくいです

そこで私は、生地を膨らませる膨張剤にベーキングパウダーと重曹の両方を使っています



ここでベーキングパウダーと重曹の違いについて解説しておきましょう

ベーキングパウダーの成分は3つ。

炭酸水素ナトリウム(重曹)や炭酸水素アンモニウムなど。

リン酸カルシウムなど。炭酸水素ナトリウムと反応してガスを発生させ、生地がアルカリ性になるのを防ぐ成分。

コーンスターチなど、炭酸水素ナトリウムと酸性剤が反応しないようにする成分。
難しい話になりますが、ベーキングパウダーは水分と合わさることで膨らみ、加熱することで二酸化炭素が発生し、細かい気泡がさらに生地を膨らませます。
余談になりますが、炭酸ガスは時間が経つと発生量が減るので、生地ができたらすぐ焼けるようにオーブンは予熱しておくことが大事です。
次に重曹について解説します

重曹の主成分は炭酸水素ナトリウムだけです。
重曹入りの生地は、加熱することで炭酸ガスを発生させ膨らみます。
それに対してベーキングパウダーは、水分と合わさるだけでガスが発生するので、重曹とは違うのですね。
とは言え、重曹も加熱しただけでガスが発生する訳ではなく、酸性の物質を加えなければうまくガスが発生しません。
酸性の物質とは、レモン汁や酢などのことです。
ちなみに、酸っぱくないのですが、ハチミツ、黒蜜、チョコレートなども酸性なので、これらを生地に加えても、焼いたときふっくらと膨らみますよ

ただ、重曹にはひとつだけ難点があり、たくさん使うと後味が苦くなり、微かにしょっぱみが残ってしまいます

「だったらベーキングパウダーの方が良いじゃないか」と感じられるかと思いますが、ちょっとお待ち下さい

この2つの膨張剤は、それぞれ得意不得意があるのです。

ベーキングパウダーは生地を縦に膨らませる作用があり、重曹は横に膨らませる作用があります。
パウンドケーキやマフィンなど、焼き菓子を作る際には、ベーキングパウダー。
まんじゅうや蒸しパンを作る際は、しょっぱみがあるくらいの方がおいしいので、重曹をオススメします

つまり、特徴に合わせて使い分けするのが良いということです。

前置きが長くなりましたが、ここで生おからの焼き菓子の話に戻ります。
生おからは、粒が大きく水分量があるので、ベーキングパウダーだけだと生地が重くなり、膨らむパワーが足りずにどっしりとした仕上がりになります

このどっしり感は、万人受けするとは言い難く、個人的にはどうにかして食べやすい食感にしたいと思ったものです。
そこで、生地にベーキングパウダーと重曹の両方を入れてみたところ、ベーキングパウダーだけの生地の物よりも膨らんだのです

これを食べたところ、どっしり感が薄れ、おから入りとは思えない食感に

それ以来、生おからの焼き菓子にはベーキングパウダーと重曹の両方を使うようになりました

ちなみに重曹だけで生地を作ったこともあるのですが、これだと苦みが強くていまいちの仕上がりになってしまいました。

以上を踏まえまして、今回はレモン汁をたっぷり使って作る、「生おからのレモンパウンドケーキ」を作りたいと思います

こちらのレシピは小麦粉50gに対し、生おからを100g使います。
重曹を作用させるために、レモン汁とハチミツを加えて、重量感あるおからでもしっかりと膨らむようにしています。
こうして作ったレモンパウンドケーキは、レモンの爽やかな風味が香る、大人の味わいになっています

ぜひ、レモンのおいしい初夏に作って頂けたらと思います

