こんにちは。
料理家の野上優佳子です。
皆さんの食器棚には、どんな食器がありますか。
普段使う物を見てみれば、茶碗や汁碗、湯のみ、丼、小鉢などは和食器
マグカップやパン皿、ディナー皿、サラダボウルなどは洋食器
私たちが、様々な国の料理を家庭料理にまで吸収し、独自に発展させていることが、ここからだけでもうかがえます。
私たちは汁物 や茶
を飲む時、器を手に取って食べる習慣があります。
ご飯を食べるときにも、茶碗を持たずに食べると行儀が悪いと叱られますよね。
欧米では基本的にスープ皿は手で持たず、同じアジア圏の中国や韓国も持たずに食べます。
形を比較してみると、茶を飲むとき、ティーカップには取っ手がありますが、湯のみには無い。
スープ皿には取っ手がない分、スプーンやレンゲですくって食べる。
基本的に汁物は熱いので、持たずに飲む方が本来合理的なのかもしれません。
しかし私たちは、汁碗はそのまま持って飲む。
湯のみも汁碗も熱々なのに手に持つことができるのは、糸底があるから です。
糸底(いとぞこ)、とは糸尻(いとじり)とも言い、陶器の底にある丸い支えの部分のことを指します。
陶器を作る過程で、成型後ろくろから切り離す際に糸を使うことが言葉の由来と言われています 。
皆さんが、熱々のお茶を飲む時や炊きたてご飯を食べるときの動作を思い浮かべてみて下さい。
そのまま側面は熱くて持てず、縁と糸底を持っているはずです。
わざわざ取っ手を付けなくても持つことができる、とてもシンプルで機能的な役割を、この糸底が果たしています。
取っ手を付けけなくても良い造りは、洗いやすさや収納のしやすさ(重ねやすさ)という利点も生み出しています。
そして何より、器を手に持ち食事をする、という作法を大きく下支えしています。
普段、あまり眺めることのない糸底。
実は私たちの食生活において、なくてはならない存在だと言えるでしょう。
さて今週は、秋の新米と旬野菜「ナス」を使った『豚肉とナスの混ぜご飯』をご紹介します。
季節のおいしさをたっぷり味わえますよ。
ぜひお試し下さい!