こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。
日本の夏はお盆や帰省などの行事があり、親族やお友だちと一緒に過ごす機会が増えます。
皆でどこかに出かけるのなら気は楽ですが、自宅に招いておもてなしをするとなると、なかなか大変ですよね
中でも特に悩んでしまうのが、おもてなし料理ではないでしょうか
お客様をもてなす料理は、どこの国においても特別なものです。
韓国では食卓の脚が折れるくらい大量の料理を出すことが良いと言われているのですよ。
もてなしに対するこの考え方は、古くから韓国で使われている、食事を載せるための小盤(ソバン)というテーブルの形状にも反映されています。
小盤の脚は緩やかな曲線を描いているのですが、これは食卓に溢れるくらいたくさんの料理が載せられ、小盤の脚が曲がってしまった様を表現しているため、この形になったそうです。
韓国のおもてなし料理で思い浮かぶのは、歴史のある酒案床(チュアンサン)です。
酒案床は、朝鮮王朝時代に宮中で考え出された配膳のひとつで、王様の1日5回の食事とは別に、来賓を酒でもてなすためのお膳です。
お酒は焼酎、濁酒(マッコリ)、清酒があり、清酒は日本の熱燗のように温めて出されました。
おつまみはアンジュと言って、冷たい物、温かい物がそれぞれ用意されました。
アンジュの代表的な物は、食材に小麦粉や卵液をまぶして焼いたジョン、ゆで肉、肉や野菜などの煮物、生野菜の和え物、鍋物、キムチ、餅などの菓子類です。
また、おもてなし料理の中で一番贅沢な物は「神仙炉(シンソンロ)」でしょう
皮をむいたぎんなんやくるみ、小さく焼いた肉団子、切り揃えたゆで肉、白身魚や野菜のチヂミなどをドーナツのような形をした真鍮の器にきれいに並べ、味付けした牛肉スープを注いで火にかけながら頂く料理です。
神仙炉は、半日がかりで作る料理ですから、酒案床が来賓をもてなすのに重要なお膳だったことが窺えます。
食卓の脚が曲がる程たくさんの料理を用意するのは、食材が豊富にある現代でも大変なことだろうと思います
ゆで肉はそのままスライスして、辛子じょうゆを添えて一品。
肉をゆでたスープで、お鍋を作ってもう一品。
このように、様々な工夫を凝らして酒案床は饗(きょう)されたのでしょう。
お客様を精一杯もてなしたい気持ちは万国共通なのですね
それでは、本日の料理は「ゆで肉サラダ」です。
アンジュで使うゆで肉は、ブロック肉をじっくりゆでてスライスした物ですが、今回は家庭で手軽に作れるように、しゃぶしゃぶ用の牛肉で代用しました。
使用するソースは、アンジュ料理によく登場する辛子ソースです。
練り辛子を使ったレシピにしましたが、お好みでマスタードを使ってもおいしいです。
ぜひお試し下さい