こんにちは、料理家の野上優佳子です。
日が落ちるのが早くなり、北からは紅葉 の便りがちらほら。
この時期ならではの自然の恵みを堪能できる季節になりましたね。
そのひとつが「栗」です。
甘露煮などは1年中食べられますが、ゆでたて蒸したてのホクホクを味わえるのは、まさに今だけ。
甘くてほっこりした味わいが人気の栗は、いつ頃から食べられ始めたのでしょう?青森県にある三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)の縄文時代の集落跡からは、大規模なクリ栽培の跡が見つかりました。
また、万葉集や源氏物語にも登場しています。
いかに栗が日本人の生活に古くから、かかわってきたかが、分かりますね。
そして栗は、季節を知らせる食材、縁起物としても、暮らしの中に息づいています。 旧暦9月9日は重陽(ちょうよう)の節句です。
正月や桃の節句、端午の節句、七夕と並ぶ五節句のひとつとして、古くは宮中の公式行事が盛大に行なわれる大切な日でした。
菊酒を飲む風習などが今も伝えられまていますが、庶民の中では菊を愛でるよりも栗を食べる風習の地域が多かったそうです。
例えば愛媛県の宇和地方では【栗節句】として、栗飯などを炊いて、収穫祝いと翌年の豊作を願う風習があったそうです。
また、中秋の名月として十五夜の次に美しいとされる旧暦9月13日の「十三夜」は、別名「栗名月」と呼ばれています。
(十五夜を見て十三夜を見ないのは片月見だとして縁起が悪い、と昔は言われました)。
また、お正月の栗きんとんの黄金色から財運や金運の縁起物 、とも言われますが、
戦国時代は保存食の「かち栗」(栗を鬼皮付きのまま干してから、鬼皮と渋皮をむいた実)が「勝ち栗」で縁起が良いと、武将たちが戦いの前に食べたり、身につけたりした と言われます。
歴史と物語を持つ、秋ならではの食材、栗。
ぜひ堪能したいですね。
さて本日は、栗をたっぷり使った「マロンパウンドケーキ」をご紹介します。
お試し下さいね。