こんにちは、料理家の野上優佳子です。
旧暦10月12日は芭蕉忌。
現在の暦ではちょうど今頃は11月の終わりにあたり、この日は俳聖・松尾芭蕉が亡くなった日です。
毎年この頃になると、私はなぜか「とろろ汁」が食べたくなります。
それは芭蕉の「梅わかな まりこの宿の とろろ汁」という句を思い出すからでしょう。
梅若菜と言うのですから、句の季節は初春のことなのでしょうが、私にとっては芭蕉の句の中でも「今の時期」という印象が深い一句です。
子どもの頃、この句に出会ったときに、
「有名な人が詠むぐらいだから、まりこって言うところのとろろ汁はきっととてもおいしいに違いない」と思ったのです。
つまり、日本全国を旅しておいしい物をたくさん食べただろうから、彼の味覚に間違いはないだろう なーんて考えた程、この句は私に強烈な印象を残しました。
もちろん、句にはもっと別のきちんとした意味があるんですけどね
この句に出てくるまりこ(丸子)とは、静岡県静岡市にある東海道鞠子(丸子)宿のことです。
浮世絵師安藤広重の『東海道五十三次』 には、この宿でおいしそうにとろろ汁を食べる 弥次さんと喜多さんが描かれています
現在でも丸子には創業慶長元年(1596年)という老舗のとろろ汁屋があり、自然薯(じねんじょ)を使った伝統の味を楽しむことができます。
ちなみに「とろろ」と一口に言っても、細めの野球バットのような長芋やイチョウ型の大和芋は「ナガイモ」で、自然薯は「ヤマノイモ」と言って別種なのだそうです。
私たちの食生活に馴染み深いのは、長芋ですね。
スーパーなどでは1年中見かけますが、実は今まさに秋掘り の旬を迎えています。
というわけで本日は、旬の長芋を使ったレシピをご紹介します。
優しくて深い味わいの『鶏ひき肉と長芋と卵のスープ』です。
ぜひお試し下さいね。