こんにちは、料理家の野上優佳子です。
和食のユネスコ無形文化遺産登録が発表されて、早5ヵ月。
ニュースで発表されたときの興奮と比べると、クールダウンしてきたと感じる今日この頃です。
日本料理は、主食の飯+副菜が基本となり、献立を考えるときは飯、汁、菜、香の物の4点を基本とします。
とは言え…このニュースを聞いたとき、「和食について改めて日本人として聞かれたら答えられるかしら 」と思ったのは、私だけではないはず。
なんとなく使っている言葉の意味も、改めて聞かれると思わず言葉に詰まることはよくありますよね。
例えば「懐石料理」と「会席料理」 。
どちらも「かいせき」ですが、その違いとは…?
「懐石料理」は、茶道から発し、本来は茶を楽しむための物で茶の湯の世界では「懐石」とだけ言い、茶の湯から離れて料理のみが切り出されるようになって懐石料理と言う言葉になりました。
その奥深さは簡単に説明できるものではありませんが、特徴を挙げると、ひとつひとつ食べ終わるごとにそのつど料理が運ばれる、いわばコース仕立ての形式。
流派による違いなどがありますが、飯・汁・向付(刺身などが多い)は最初に出され、酒・煮物・焼き物・預け鉢(炊き合わせなど)・吸物・八寸(珍味など)・湯と香の物・菓子、と言った具合。
お客様に対して、「料理が適切な温度とタイミングで運ばれる」時系列を持つ料理であること、そして「食べられない飾りなどを排し、余分な物なく食べきることができる」というスタイルは、それまで主流だった一度にたくさんの膳を並べる本膳料理に対して大変画期的な物だったことでしょう。
一方、「会席料理」は、もともと武家の正式な膳立てである本膳料理から派生した物で簡素で実用的に変化を遂げ、江戸時代の料理茶屋で出される事になった、主に酒 を楽しむ宴席の料理です。
先付(前菜)・椀物(吸物)・向付(刺身など)・鉢肴(焼き物)・強肴(煮物)・止肴(酢の物や和え物)・飯や止め椀、香の物・水菓子と言った具合。
概略ではありますが、茶と酒、それぞれルーツや目的が違うのは大変面白いところですね。改めて、それぞれを頂くときに献立だけでない楽しみ方ができるのではないでしょうか。
さて今回は、旬の食材、アジを使った「アジの香味寿司」をご紹介します。
ミョウガや大葉などの香味野菜を混ぜ込んだ、季節を感じる爽やかな味わいです。ぜひお試し下さいね。