こんにちは、料理家の野上優佳子です。秋が深まり、温かい湯気がますます恋しくなってきましたね 。
秋でなければ味わえない果物、と言えば「柿」もそのひとつ。
東アジア原産で大別すると、柿は、「渋柿」と「甘柿」の2種類。
栽培用種子は中国から渡来しましたが、日本の山野にも自生していた果物で、平安時代にはすでに食用栽培され、渋柿の加工食品である干し柿の技術も定着。
有職故実(ゆうそくこじつ)の『延喜式(えんぎしき)』などにも干し柿が供物の菓子として記されています。
生食用の「甘柿」については、日本での品種改良がめざましく、その代表的な物が「富有柿 (ふゆうがき) 」で、明治時代に岐阜県を発祥とし、全国に最も普及した品種です
人気は国内にとどまらず、ヨーロッパ諸国で は「Kaki」と呼ばれ、米国のスーパーマーケットなどでは、「Fuyu persimmon」と品種名がそのまま商品名として販売されている程です。
一方、「渋柿」は「刀根柿(とねがき)」や「平核無柿(ひらたねなしがき)」などが有名。
渋みのもとは、タンニンと呼ばれるポリフェノールの一種です。
食べる際はこの渋を抜きますが、その代表的な物が「つるし柿」です。 皮をむいてヒモに吊るし、ざっと熱湯に通して殺菌したら日当り・風通しの良い軒先などにぶら下げておきます。
そして、1週間〜10日程で表面が乾燥したら、外側から内側に向かって、中をもみほぐすように指先で軽くもみます。
さらに1週間干しておき、実をもんでまた1週間おいたら、渋はすっかり抜けて甘くてトロトロのつるし柿ができあがります。
白い粉が浮いてくるまでしっかり干せば、干し柿になりますよ。
白い粉は果糖やブドウ糖が結晶化した物なので、食べても安心です。
ちなみに渋が特に強い信濃柿のカキ渋は、染色の他に防腐剤や塗り薬などに利用されることもあるそうです。
その他、柿の葉を乾燥させた柿葉茶は内出血の止血効果があると言われ、ヘタの部分を乾燥させて煎じた物はしゃっくり止めにと、古くから様々な部位が民間療法に重宝されてきました。
まさに、日本が誇る伝統食材と言えますね。
さて本日のレシピですが、生食用の甘柿を生ハムと合わせた『柿と生ハムのサラダ』をご紹介します。
カリッとした食感の柿がおすすめです。さわやかな柿の甘みが生ハムの塩分と相性バッチリで、とても華やかなサラダです。ぜひお試し下さいね。